透子はくたっと眉を下げた。


「でも、急に変わるのは難しいですね」


「……変わってくれよ」


その声はすがるような響きで、
どきりとする。


「いきなりじゃなくていいから、
もう少し本音で喋ってくれ」


「本音……ですか?」


「七瀬の言葉は難しすぎて、
どこまで信じていいのか分からなくなるんだ」


透子は彼に言い返す。


「私だって、上条さんの気持ちが全然分かりません。
上条さんの気持ちは教えてもらえるんですか?」



「そんなに天音がいいのかって、この間言ってただろ?」


「はい」


「どっちでもいいんだ」


その言葉に驚き、硬直してしまう。


違った意味にとられたのが分かったのか、
上条は焦ったように頭をかいた。


「って言うと、言い方悪いか」


「どっちでもって……」


「日本語はむずかしいな」


「何ですかそれ」


思わず笑ってしまう。


上条も微笑みながら、透子の髪を撫でた。


「天音さんには一瞬で心を奪われた。
七瀬には、だんだん惹かれていった」


透子は彼の声にじっと耳を傾けていた。


「両方好きなんだ」