「はい。
私上条さんがこの会社からいなくなっても、
ちゃんと一人で頑張れるようになりますから」
上条の手が、ゆるりと透子の頬に触れる。
彼の眼差しが熱を帯びていて、思わず胸が高鳴る。
「……七瀬」
「は、い」
上条は真顔で質問した。
「俺はいなくなるのか?」
「…………え?」
「俺はいなくならんが」
「……え?」
透子の頭の中が真っ白になる。
「え? えっ?
だ、だって、この間聞いた時、
上条さん異動になるって!」
「いやだから」
上条も少し焦ったように顔をしかめる。
「木本の話だろ?」
「……木本さん?」
言われて初めて、彼女の存在を思い出した。
「そういえば最近、見ないような」
上条は困ったように首に手を当て、頭をひねった。
「木本なぁ、出社拒否してたんだよ」
「……うぇ?」
予想外すぎて、変な声が出てしまった。

