自分の顔のことを言っているのだと分かり、
透子はにっこりと微笑んだ。
「逃げないでちゃんと自分と、
周りにいる人と、向き合いたいって思ったんです」
上条は複雑そうに眉を寄せた。
「私、ずっと逃げてました。
違う顔になれる化粧をしてても、してなくても。
結局きちんと周りの人に心を開いていなかったんです」
透子は上条をじっと見上げた。
「でも上条さんが教えてくれたから」
「俺は……」
「いつも全部人のせいに
しているだけじゃないかって。
結局私、今まで一生懸命生きてなかったんです。
今日という日はもう二度と来ないのに、
手を抜いてたんです」
透子の瞳に涙がにじんだ。
「上条さん、ありがとうございます。
私、もう大丈夫です」
それから悲しい気持ちが押し寄せ、
少し下に俯いた。
「最後に、心配をかけずにというか……
安心してもらいたかったんです」
「最後?」

