「っていうか、自分でばらしたんだけど」
冬馬は眉をひそめ、何か考えるように口をつぐんでいる。
「私ね、もう多分、本当に嫌われたと思う
昔のことも話したし、ひかれちゃっただろうし」
彼はぼそぼそした口調で呟いた。
「……だからどこがいいんだよ、
あんな堅物男」
「はは、そうだよね」
透子はそっと目を閉じる。
「私も嘘つきだけど、上条さんも大概二重人格だよね」
彼のどこが好きか。
それは透子も何度も考えたことだった。
「天音の前だと、自分のこと“私”って言うし」
彼のすべてが好き、と言えるほど、
自分だってきっと大人でない。
「会社だといつもむすっとした顔してるのに、
天音の前だと笑顔でいようとしてるし」
悲しいことも、納得できないこともたくさんあった。
嫌いな所だって、もちろんないわけじゃない。
「態度も普段はちょっと偉そうだし」
そこで透子の声が、鼻にかかってこもった響きになる。

