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透子はその日の夜、冬馬を待っていた。
家で泣いた日から冬馬は透子を気にかけているらしく、
以前より頻繁に連絡をとってきた。
透子はオレンジ色の照明をあびながら、
窓の外を見下ろしていた。
二階からは、いつも時計台が見える。
そしてあの時計を見る度、上条のことを思い出す。
そういえば、
上条さんと天音として初めて会った日は、
冬馬とここで食事をしていて
偶然会社帰りの上条さんを見つけたんだった。
彼が異動になってしまえばもう、
そんな機会も絶対に訪れない。
透子は少しぬるくなった紅茶を口に運んだ。
「よう」
聞き慣れた声が聞こえて顔を上げると、
冬馬が立っていた。
目は眠そうに細められている。
「……仕事忙しいの?」
「あー、そこそこ。
悪かったな、遅くなって。俺が会おうって言ったのに」
「ううん」
透子は小さく首を振った。

