頭が痛いと思った。

透子自身も、
もう自分が何を言っているのか分からなかった。


本当はただ、彼のことが好きだと伝えたかった。


けれど部屋の景色は涙でぼやけて、よく分からなかった。

いっそこれが夢ならばいい。


上条も深く息をつき、
疲れたように頭を垂れた。


「……理解できない。

そんなに美しい顔をしているのに、
どうしてわざわざそんな化粧をしているんだ?

結局逃げているだけじゃないのか?

うまくいかないのは、全部顔のせいか?

自分から人に関わろうとしなかったことに
原因があるとは考えないのか?」



透子は彼を静かに睨んだ。



「美しいことが幸せなんて、
誰が決めたんですか?」



もう、彼との関係は
きっと二度と以前のように修復出来ないだろうと、
そう思ったのかもしれない。


だからこそ透子は今まで母親にさえ言えなかった過去を、
自然に口にすることが出来た。


それは今まで自分の心の底に閉まってあった、
濁った淀みのような感情だった。



「……ずっと女友達は出来ませんでした。

仲良くなったと思っても、彼氏を横取りしたとか、

好きな人にわざとちょっかいを出したとか、

身に覚えのないことを噂されて、

みんな離れていきました」