上条はしばらく透子の顔をじっと眺めていた。
混乱して、言葉が出てこない。
「俺のことを騙して楽しんでいたのか?」
悩んだ挙句、やっと彼の口から出てきたのは
そんな疑問だった。
透子は静かな声で答える。
「そうだって言ったら、どうしますか?」
困惑したように頭を振り、
上条は目線をそらす。
「……いや、そんなことはないはずだ」
「どうしてですか?」
「もしただからかうつもりなら、
いくら何でも俺の家に泊まらなかっただろう」
「あ、あれはっ……」
彼の家に泊まった日の行為が脳裏によぎり、
かっと顔が赤くなる。
「別に、深い意味なんてありません!
いつまでも処女でいるのも嫌だったし、
相手なんて誰でもよかったんです」
「やめろっ!」
上条の険しい声に、びくっと肩が震える。
「天音さんの顔で、そんなことを言わないでくれ」
その言葉は、他のどんな悪意のある言葉より心を深く沈めた。
透子の手が、思わずぎゅっと握りしめられる。
「……そんなに天音がいいですか?」

