だから突然ふられても、
距離をおきたいと言われても、
物分かりのいいフリをして、
納得したふりをして、
平気なふりをして彼と別れた。
だけど、本当はずっと聞きたかった。
こうやって声を荒らげて、
涙を流して。
――納得なんてできなかったから、
彼の本心をきちんと教えてほしかった。
「好きだったんじゃないんですか?
それとも、その人のことは遊びだったんですか?」
「違うっ!」
「だって、おかしいじゃないですか!
最近まで好きだったなら、
どうしてそんなにすぐに気持ちを
切り替えられるんですか!?
私は一体あなたの何なんですか!?」
「本気で好きだった!
彼女と結婚することも考えていた。
俺は本当に、真剣だったんだ」
上条の口調は、
とても嘘をついているとは思えないものだった。
透子の顔がくしゃりと歪む。
「……それなら、どうして」

