透子は目をぎゅっと閉じ、
気が付くと大声で叫んでいた。
「ふざけるなはこっちのセリフです!」
透子は思い切り上条を睨みつけた。
「あなたは女だったら、誰でもいいんですか!?」
「何を訳の分からないことを言ってるんだ!?」
上条も透子を睨みながら反論する。
「俺がいつ、誰でもいいと言った!?」
「どうしてキスしたんですか!?」
上条の顔が、一瞬赤らむ。
「それは……」
それにはかまわず、
透子は悲鳴をあげるように大声で叫ぶ。
「彼女がいたんじゃないんですか!?
最近の上条さんは、そんな風に見えましたけど!」
その言葉に、少し上条の語調が弱まる。
「……あぁ、確かに最近までいた。
だけど、別れたんだ」
「どうして!?」
どうして?
それは、ずっと疑問に思っていたことだった。
天音の姿では、はっきりと聞けなかった。
天音は自分の理想だった。
いつのまにか理想として作り上げた自分だったから、
どんな時も笑っていたし、
彼の前ではかわいい女性でいたかった。

