「勝手って、あんたそんな言い草ないでしょう!」
透子はかっとなり、
言ってはいけないと思っていた一言を叫んでしまう。
「元はといえば、
お母さんがこんな顔に産んだからいけないんでしょっ!
この顔のせいで、私がどれだけ苦しんだと思ってるの!?」
言い過ぎたと思い、思わず口をつぐんだ。
それは透子が子供の時、
母親に何度も問いかけた言葉だった。
それと同時に昔の嫌な記憶まで蘇り、
胸が押しつぶされるように痛んだ。
自分が小学生の時の懇談会の日。
いつもと違い浮き立った空気の教室を出て、
トイレに行き、透子は廊下を歩いていた。
自分の教室に戻ろうと歩いている途中、
自分と同じクラスの児童の母親達が噂している声が聞こえた。
「……ねぇ、透子ちゃんのお母さん、全然似てないのね」
透子は後ろから撃たれたように、
はっと目を見開いて足を止めた。

