人はどうして、大切な人がいなくなってから
後悔することしか出来ないのだろう。
透子はやっと涙がひいたと思ったのに、
また母のことを思い出してしまったのに気づく。
入院する直前、母が自分の家に泊まりに来た時。
最後の最後に、喧嘩してしまった。
「ねぇあんた、その顔何なの?」
透子の『擬態』を初めて見た母親は、
ひどく怒っていた。
「冬馬に作ってもらったの」
「どうしてわざわざそんな顔をして会社に行っているの!?」
その時の透子は、
正直母親のことを煩わしいと思った。
事情も知らず、
ただ憤りを隠そうともしない母に腹がたった。
「うるさいなぁ、ほっといてよ。
どんな化粧しようが、私の勝手でしょ!?」

