「鈴架総合病院から連絡だそうだが、
繋いでもらうか?」
「あ……」
途端に透子の顔から表情が消える。
そして必死に電話の方に駆け寄る。
「あの、母の入院している病院です!
はい、お願いします!」
病院からわざわざ会社に電話?
それだけで、悪い予感が頭の中をひしめいた。
透子は震える手で受話器を受け取った。
「もしもし」
「……はい、はいっ!
……分かりました、すぐに行きます」
透子は会話を終えた後、
半ば放心しながら受話器を置いた。
「おい、どうした!?」
「あの……」
声が震えて、うまく喋れない。
「母が危篤で、すぐに来てほしいって。
私、あの、病院に行かないと……」
上条は透子の手を掴み、
早足で歩く。
「お前、車は!?」
「な、ないです。
今日も電車で……」
透子はおろおろしながら、
上条に引っ張られて
もつれそうになる足をどうにか必死に動かした。
上条はエレベーターのボタンを強く押した。
なかなかたどり着かないことに苛立ちが募る。
……早く、早く。
急いて靴を鳴らしていると、ようやくランプが点った。
一階に降り、
駐車場についてから透子ははっとして顔を上げる。
「そうだ、
あの、タクシーを呼ばないと……」

