そして自分を起こしたのは
――やっぱり七瀬透子、だった。
上条はこわばった顔で透子を見つめる。
透子はそんな彼の心情には気づかず、
クスクス笑っていた。
「上条さん、疲れているんでしょう。
今日は切り上げてゆっくり休んでください」
「……あぁ、そうだな」
生返事をしつつ、めまぐるしく思考した。
まただ。
天音さんと七瀬を似ていると感じたのは、
一度や二度じゃない。
最初は……。
そうだ、蕎麦屋で一緒に昼を食べた時だ。
あの時は偶然だと思った。
そして二回目は、木本が仕事を押し付けていることが
判明した時。
けれど……。
上条は顔をしかめ、
帰り支度をしている透子の後ろ姿を睨みつける。
最初は、小さな。
でも確実に、降り積もっていく違和感。
七瀬に、問いかけてみようか。
『お前は一体、何者だ?』
想像するだけで、失笑がもれそうになる。
自分は一体、七瀬透子にどんな回答を期待しているのか。
上条はその考えを振り払い、
透子に声をかけた。
「七瀬」
「はい?」

