藤咲は嬉しそうに笑い、
長い三つ編みを揺らす。
「冬馬君の知り合いだったんですね」
冬馬は緩みきった顔でへらへらと藤咲に声をかける。
「天音ちゃんやっほー!」
……軽い。
別にこの男がどんな人間でも関係ないのだが、
思わず不愉快に思ってしまった。
藤咲はそんな態度にも慣れているらしい。
「はい、やっほー。
注文どうぞー」
軽く流して注文を受ける。
冬馬は彼女と軽く世間話をして見送った。
すぐにグラスに入ったビールが二つ持ってこられた。
冬馬は怪しい笑みを作り、
グラスを上にかかげる。
「とりあえず、乾杯」
上条もしぶしぶそれに従う。
ビールをグラスの中程まで一気に飲み干してから、
上条はぼそりと呟いた。
「藤咲天音が彼女だって、知ってたのか」
それを聞いた冬馬も、
数口酒を飲み
目を細めて軽く頷いた。
「天音って、アホだよね。
あ、あれ。
店員じゃなくて、
あんたの彼女の方な。
ややこしいな。
本名で呼べたら楽なんだけど」
その言葉に、ぴくりと身体をかたくする。

