上条は苦々しい表情で髪をかいた。
「あぁ、だいぶ良くないな。
特にこの書類なんかは、本来役員の承認印がいるんだ。
そういう仕事を任せられるのは、
責任を持てる、一定以上の役職がある人間だけだ。
木本はもううちで働くようになって十年以上になるし、
他の支部で新人研修も請け負ってる。
そういう立場の人間がここに入ったばかりの
七瀬に自分の仕事を押し付けるなんて、
怠慢もいいところだ。
それに……」
「それに?」
問いかけられ、上条は小さく首を振る。
「いや、何でもない」
もっと大変なことが露呈しそうだったが、
これは別に七瀬に教える必要はないだろう。
上条は疲れたように首を回した。
「とにかく上に報告して、
責任の追求をしないと。
俺の判断で決められるようなことじゃないから」
思った以上の大事になってしまった。
透子は焦り、平謝りする。
「私が悪いんです!
もっと早く気付けばよかったのに、
言われるまま仕事をしてしまったから……」
上条もその言葉に納得し、頷いた。
「そうだな、もっと早く気付けばよかった」
「はい」

