「これは、本来木本がすべき内容だ。
……それは、分かっていたか?」
透子は迷いながら、正直に答えた。
「時々木本さんに作っておいてと言われて、
その通りにしていました」
そう答えると、上条は深い溜め息を吐いた。
「ということは、ずっとこれをお前が作ってたのか」
「はい、ここ二ヶ月くらい」
それを聞き、更に頭が痛いような顔をした。
木本はよく
「七瀬さん、これもやっておいて」、
と何でもないように透子に
仕事を押し付ける癖があった。
透子も薄々これでいいのだろうか、
という心配はしていた。
渡された仕事は、入ったばかりの自分でも
一目見ただけで重要と分かる物で、困惑した。
だから一度
「木本さん、これは私がやってもいいんですか?」
とたずねたことがあった。

