それを思い出すと、どうしてもおかしかった。


上条はへの字に口を曲げ、言いづらそうに話す。



「私は普通にすると、どうしても硬い表情になってしまうんですよ。

天音さんといる時は、これでもなるべく怖がられないように
頑張ってるんですけど」


透子の笑い声がまた大きくなる。


「知ってます」


彼がだいぶ無理をしているのなんて、最初から知っている。


笑い続けていると、上条は参ったというように目尻を下げた。



「会社でも、つい無愛想になってしまって。
部下にもよく誤解されてるだろうなと思います」


その通りです、とは言えない。


「最近、うちの部署に入って来た女性社員がいるんですけど」


思わずどきりとする。

明らかに自分のことだ。


「この間もうまくフォロー出来なくて、結局落ち込ませてしまいました」



透子は隠れて布団を握りしめながら、恐る恐る質問した。


「……何て言ったんですか?」