「お前さぁ、何でも一人で抱え込みすぎなんだよ。
なんかあるとすぐ熱出るだろ」


透子の表情がより暗くなる。


「うん。
それでけっこう休んじゃってるから……そういうのもまた、迷惑かけちゃってるし気に入らないんだと思う」


冬馬は不満気に口を尖らせる。


「そんなんじゃ今に身体壊すぞ。やめちまえよ」


「でも、私が仕事出来ないのは事実だし……。
私が辞めると、誰かに負担がかかっちゃうから」


「あんなぁ、入ったばっかで何も知らない部署で、何でも出来る人間なんかいねーっつーの。
それにお前の変わりなんてなぁ、腐るほどいんだよ。
つうかOLなんて、にこにこ笑って茶だけ出しとけば後は仕事なんてしなくてもいいんだっての」


「それは偏見だよ」



冬馬は腕を組み、窓の外を眺めた。
いつの間にか雪が散らついている。今夜も冷え込みそうだ。


「お前、受付とかやればよかったのに。
お前の学歴と顔なら確実に合格だし、わざわざそんな辛い仕事選ぶことねーだろ」

「嫌だよ、元の顔では働きたくないもん」

透子もつられて外を眺め、ぺたりとガラスに張り付いた。

「あ」


「あ?」


下を歩く人影のなかに、知っている人物の姿が見えた。


「上条さんだ」



「あぁ?」


カフェの二階の窓から、スーツ姿の男性が数人連れ立って歩いていくのが見えた。


足取りは重く、疲れている様子が透子達のいる場所からも感じ取れた。


「こんな時間まで大変だなぁ」