「なんだよ、うまくいってないのか?」
「……ちょっと、新しい部署の上司に嫌われてるみたいで。
会社に行くの、辛くて」
愚痴はなるべく人に言わないと決めたが、冬馬だけは別だった。
隠していてもどうせ気づかれてしまうので、いつのまにか冬馬にだけは本音を言うようになっていた。
飾った言葉や遠慮がなく率直に意見を述べてくれるので、透子としても彼の意見はありがたかった。
「木本さんに怒られるのはほぼ毎日のことなんだけど。
……今日は、課長の態度のほうが堪えたかもしれない」
「なんて言われたんだ?」
「七瀬に言ってもしょうがないから、もうほうっておいたらどうですかって」
途端に冬馬は顔をしかめる。
「うわ、うっざ。
やめちまえやめちまえ、そんな会社」
「でも、まだ入って一年くらいだから」
「入って一年でも、今の部署に行ってからずっとそんな調子なんだろ?
それつまりもう三ヶ月くらいずっとそんな感じってことだろ?」
「…………」
透子は静かに頷いた。

