昔のように戻って欲しい。 歩くのが不自由になっても、 障害が残ってもいい。 せめて、目を覚まして笑ってくれればいい。 「お母さん、起きて」 透子は母のベッドに顔を埋めて泣いた。 「お願い、だから……」 けれど、彼女は何も言ってくれなかった。 乾燥して干からびた葉のようになった手を ぎゅっと握りしめ、うなだれた。 結局その日も、最後まで母親の意識が 戻ることはなかった。