荘(仮)

 駄管理人見なかった?
 いえ〜今日は見ていませんわ〜
 くっ、雲雀さんから中に入ったって聞いたのにっ。どこに雲隠れしたあの魔法遣いっ。
 まほう〜?
 ごめん、なんでもない。

 それより綾女、どこか行くの?
 お買物を兼ねて、お散歩でもと思いまして〜
 …貴方少しぼんやりしてるんだから、ちゃんと買い物しなさいよ? 真兎に迷惑掛けないように。
 兎ちゃんにはお世話してもらってるから〜
 自覚しているならいいわ。

 ああ、そうそう。もし今夜の夕飯をハンバーグにするなら言って? 特注の肉を持って参加するから。大丈夫〜ハジメカラミンチだからバレはしない。

「と、笑顔で言っていたので〜今夜は」
「マダム!」
 綾女の言葉を遮って、がっと肩を掴んだ。
 普段ならセクハラだとつっこむ役がいるのだが、今回はそれはいない。
 ちなみにセクハラでもない。彼は必死なのだ。
「僕は次の場所に向かわなければならない。また会える日まで、ハンバーグはとっておいてくれ」
「はあ〜?」

「では、アディオス!」

 格好よく決めて、箒を持って飛び降りた。
 ちなみにここは三階だ。



「見つけた!」

 彼が飛んだコンマの差で、美琴の声が降ってきた。
 文字通り、一つ上から地面に向かって。

 ――ずおおおおおおおおおお

 黒い巨大な影が降った。
 何度も言うが、ここは三階、上は四階。
 外からは元気な二人の声。

「さてと〜」
 買い物袋を持つ綾女。
「今夜は〜ハンバーグ♪」
 実に美味しそうな夕食だ。