「やっと静かになったな。
俺は吸血鬼。赤い星に住んでいた。
だがその星から移住してきたんだ。」
__何てことだ。
平弥は思う。
__吸血鬼?それとも宇宙人?何にしても、友好的な感じじゃないな。
いつの日か夢に描いた、銀色の未確認生物を頭の中から消し去った。
「…これが俺だ。この星の支配者。よく覚えとけよ?」
頭の中に鮮明なイメージが送られてきた。
黒髪の、赤と金のドットアイ。
身長は分からないが、年齢的にいえば高校生くらいか。
色白の、美少年だった。
__まるっきりイメージ通りじゃねえか。
平弥は彼に親近感を持った。
__支配者。
やっぱり親近感は嘘だ。
平弥は肩を組み笑う彼を頭の中から消し去った。
「だがまぁ、いきなり来てここは俺のものだといわれても納得がいかないだろう。
だからな、お前らに選択肢をやるよ。」
脳内の彼がニヤリと笑んだ。
「降伏して、生きるか死ぬかを選ぶか、
抵抗して、俺の支配下に堕ちるか。
なんにせよ自由はないが、おとなしく降伏すればお前らの命だけはやるよ」
「っ…」
平弥は顔をしかめた。
__なんてたちのわりぃ奴なんだよ。
「万に一つもお前らが勝てば俺のすべてをやるよ。
お前らの言うことなら何でも聞く。
だが、その確率はないな。
抵抗の規模は何でも構わない。
国レベルで挑んで来ようと個人で俺に歯向かおうと。
ただし、降伏は自分の意志でしろよ。
反旗を翻されちゃ困る。
今すぐ降伏したい奴は…そうだな、これをかぶってろ」
脳内で帽子のようなものを差し出してくる。
不思議なことに、それは手に移っていた。
「かぶってる奴には危害を加えない。そのかわり、一度つけたら取れないぞ。
あと、そいつには俺の指示に従ってもらう。
面白いだろ?
お前ら人間vs俺一人の戦争。
俺に武器を向けた瞬間、その帽子は消える。
そいつには、何にも保障できないからな。」
ゆっくりと薄れていったイメージ。
現実は、水を打ったように静かだった。


