全てを手中に収めるための暗い魔法。


南の国で砂漠の丘は崩れゆき町は巨大なアリジゴクと化す。

北の国で降る雪は瞬く間に風を伴い吹き付ける吹雪となる。

東の国で昇る太陽は


「助けて!」

「死にたくない!」

「そこどいてよ!!」

ああ、嘆かわしい。

どうせ助からないんだから、無駄なあがきなどしなければいい。

マンションの非常口には人が押し寄せ、何とか逃げようともがく。

馬鹿にもほどがある。

階段を押して押されて転げ落ち、圧迫死する子供。

緩やかに弧を描いて、確かに太陽は“近づいて”来ている。

地下まで逃げても死ぬんなら、意味はない。


じわじわと熱と大きさを増していく。


大きすぎるその天体は街を焼き、人を殺していった。

陸を砕き、海を消した。

闇を裂き、光を焦がしていった。


綺麗なまでに、絶望的だった。