「ねーね、悪いことしてるの?」
「ゴホッ…!お前ら…たしか桃とモモ…ッ」
「悪いことしちゃいけないんだよー」
「悪い奴」
「悪いの」
「僕ら」
「戦う」
「やっつける」
「か」
「み」
「様」
「へ」
「の」
「「手土産にしてやるよ」」
にたり、とぞっとするような笑みで二人は笑った。
「…!?」
背に生えた柔らかそうな翼は、漆黒の堕天使の色。
モモが持つのはオニキスの暗い竪琴。
桃が持つのは真っ赤なリンゴ。
二人ともが腰に差すのはいつか見た、あの白い羽で彩られた、剣。
「ああ、これ?」
「僕らを心配して、仲間が来てくれた」
「ありがたかった」
「三人とも、殺った」
「ワックスで固めた」
「きっとイタイヨ」
「唯一の」
「弱点」
「なんで」
「しょ?」
「不思」
「義だよね」
「十字架よ」
「り天使」
「の羽が苦手」
「なんだから」
ずっと彼が凝視していたからか、二人は楽しそうに笑って言った。
彼は、二人に言い知れぬ狂気を感じ、後ずさった。
「きっと喜んでくれてるはずだよ。みんな優しいから」
「僕らのために死んでも」
仲間の天使を、天使が。
彼さえしない行為を、幼い天使が。
「「殺るよ」」
それを合図に、二人は彼に襲い掛かった。