「全く、どうなってるの…」
自宅の巨大なテレビを見ながら、松浦凜は小首を傾げた。
「真面目にやってよね、もう」
画面の中では空爆部隊があの吸血鬼相手に戦闘を繰り広げていた。
フワフワのソファにゆったりと身を沈め、それを眺める。
圧倒的に吸血鬼がおしている。
「勝ち目はなさそう」
___どかぁぁん!!
『お前ら馬鹿じゃね』
『とにかく当てろ!!』
『その命中力のなさじゃ先が思いられる。俺が一から叩き直すか』
踊るように戦場を駆け抜けていく。
精鋭十か国の戦闘機と射撃部隊の総攻撃をもってしても吸血鬼は汗ひとつかかない。
「でも学校は休みだしラッキーか」
テレビを見ていても全く現実感がない。
何かドラマを見ているような気分だった。
「本当に私たちのこと狙ってくるの?」
この地球には何十億の人間がいる。
その中には何十の国がある。
ここを攻めてくるのは何億分の一の確率。
そんな確率のために怯える必要なんて全くない。
凜はそう考えていた。
『ふぅ。Draw-two.』
『しまった!!また戦闘機が!』
『Draw.』
『うわぁぁっ!?』
「あらら、裏切ってるじゃん」
『REVERSE.』
死にかけた兵を蘇生させ、自分は手を下さずに戦う。
凜は右手のスマホの画面の上で、指を躍らせた。
そこでは、現在のニュースが流れていた。
そして、それに関する世界各国の人たちにコメント。
___吸血鬼強ぇぇ!!
___最強っしょ!
___ていうか、めちゃかっこいーしー(はあと)
___確かに(笑)美形だよね~
___彼氏とかいんのカナ?(笑)
凜は常に更新されていくコメントに目を走らせた。
___吸血鬼が強いっていうか、軍隊が弱いんじゃないの?(笑)
___確かに!「たいちょ―(泣)」とかマジ受ける(爆)
___勝つわけなくない?
___どーい
___俺も~
___でもそれ困るっしょ
___そんな、いくらあいつでも世界征服とか(笑)
___中二病かってかんじやしな(爆)
___でもやりかねんで~
___こわ~
___降伏とかするつもり?
___そん時考える!
___んじゃ俺も←
___以下同文
___それ有~?
___ありでしょ!
___ふるっ!
「降伏かぁ」
いつかすることにはなりそうだった。
しばらく目を離していると、いきなり音が止まった。
___なになに?
___うごきとまってね?
___だるまさん?
___戦場でかよ(笑)
___吸血鬼笑ってら
___なんか言ってない?
___「Skip.」だってよ~
___なんのこと?
___またウノじゃないの~
___てか、いまどきカードゲームとか古いし~
___確かに(笑)
___ルールとかしらね~
___検索検索!
___だね~(笑)
___でたでた!次のプレイヤーの順番飛ばすんだってよ~
___んで固まってるわけかー


