「な、全滅!?」
「いえ、そうではなくてですね…
死んではいないんですよ。でもすっかりやられた、というか」
「やられた?」
「はい、一人を除いたら全員吸血されていて…
その一人も、あ~…アニメであるじゃないですか、ミラクルビームとかなんとか…」
「浄化されていたと?」
「そんなもんです」
自衛隊隊員、宮崎直人(ミヤザキナオヒト)は言いながら歯ぎしりした。
「すみません、あいつ…」
「いや、構わない。明日は空と海から攻めるつもりだ。交信は…」
「知ってると思いますよ。」
「だろうな。」
「あと、降伏したほうがいいかもしれないです。強かった…」
「…」
「あ、それと、不思議なことが有りまして。」
「不思議?」
「私も我が目を疑いました…隊員の傷が見る見る癒えていって…」
「死ねもしない、と?」
「はい。…恐ろしい」
泣きながら殺せと叫ぶも、痛みは感じるのに息絶えることはない。
全身に震えが走ったのを宮崎はまだ覚えていた。
___死とは、安楽…
切に宮崎はそう感じていた。
「…降伏はできない。人類の誇りにかけてもな」
「そう、ですか」
___でも、あいつには勝てない…
幸いにも、宮崎はあの吸血鬼に武器はむけていない。
服従の徴を、軽く指で撫でた。
「勝利を、祈ります」
そして彼は、真っ赤な帽子を、深々とかぶった。