近づいてくる小野くんを見て、私はもう心臓が口から出るんじゃないかと思う。
嘘の告白でこんなのだったら、本当に好きな人が出来たときにする告白、どうなるんだろう。
自分の将来に不安を覚えた。
もう、自分のところまであと5mというところで私は目を伏せた。
しばらくすると。
「えっと、君?」
前髪から覗くのは、さっきみたシンプルな靴。
私は顔を上げた。
「そ、そうです!私が松本彩花です、はい!」
テンパって告白する要素も欠片もない言葉になる。
「松本彩花っていうの?
この手紙、名前書いてなくて誰かなって思ってた」
「ご、ごめんなさいっ!」
テンパりすぎでしょ。
マジ終わったわ、私の人生。
たかが罰ゲームなのに。
「それで...言いたいことって何?」
私より背の高い小野くんを見ると、優しい表情でこちらを見ていた。
松本彩花!
その表情に騙されるな。
こいつ絶対内心では「何だよこいつ」とか「気持ちわりいな」とか思ってんのよ!
それならはっきり言っちゃえ!
「あ、あの...」
「好きです。付き合ってください」
小野柊也の顔を見ず言った。
彼がどんな表情をしていたかは知らない。
そして、昇降口にいる優奈と美紅がどんな反応をしたかも知らない。
「...うん、こちらこそよろしく」
は?
こちらこそよろしくって何ですか。

