♪~♪~♪
「この曲俺の一番好きな曲♪」
「携帯に取り込んだ曲をラジオに飛ばしてんの。」
『へえ~そうなんだ♪』
その曲がホントにお気に入りなようで、
音楽に合わせて口ずさみながら
終始嬉しそうな顔をしていた。
私はその頃その曲を歌う歌手を全く知らなかったけど、
今ではこの日優が聞いてた曲が
私の一番のお気に入りになったんだ。
赤信号で車が止まる。
「ねえ、手・・・繋いでもいい?」
優が不安そうな顔で私にそう言った。
びっくりした。
今までそんなこと言ってきた人
一人もいなかったし、
手は外で繋ぐものだって思ってたから。
「手繋いで、彩がホントに俺の隣にいるって
感じたい。」
きゅん。
なんてクサい台詞。
でも、すごく嬉しかった。
『いいよ。』
優が手のひらを上に向けた。
その手の上に自分の手を重ねる。
たったそれだけのことなのに
すごくドキドキした。
「片手運転~♪」
『危ないよ』
「全然。
運転は毎日仕事でしてるから!」
優の仕事はトラックの運転手。
たまに私に自分が乗ってるトラックや
景色を撮って送ってくれる。
朝早かったり夜遅かったり
波がある仕事だから
毎日事故にあわないように
願ったりしてた。
未だにニュースで
「トラック事故」と出ると
それが優じゃないと
確信できるまでテレビから
目を離せられないでいる。
少し窓を開けた。
海の匂いがする。
海はもうすぐそこのようだ。
