涙色と恋色。

「今、健くんの事考えてたでしょ?」


「んなっ?!考えてないよ!」

喉にご飯をつまらせてしまった。

「ゴホッ…ッ…お茶!」

「もう…冗談よ!」

苦笑しながら私の背中をポンポン叩く。

この優しさに、どれだけ救われただろう。


この笑顔に、どれだけ励まされただろう。


「…いつも、ありがとう」



いざとなって
言葉にするのは、すごい恥ずかしい。


「いきなりどうしちゃったの!結月らしくないじゃない」


「あの日から本当にあっという間だね」


お父さんが亡くなって、
もうすぐ2年半経ちそうになる。

お母さんは、少し肩をすくめた。

「本当ね」


お父さんが亡くなってから、
今まで以上に愛情を注いでくれてる。

大事にしてくれてるって実感してる。

だからこそ、
今の自分があるんだ。

お父さんがいないから、とか

そんなこと一度も言われなかった。


涙ひとつ見せず、
弱音もひとつ吐かず、

女手一つで育ててくれた。

寂しさ一つ感じなかった。
いつだって、愛でいっぱいだったから。