「でも、あたしが話したら、きっと…岩淵くんを傷つけます…」
「…っ、」
息を呑むのがわかった。ほら、こんな風に言われたら、きっとあたしみたいに、少しくらい心が揺らぐ。
傷つきたくないから。傷つきたくなくて、必死でリンの事忘れた。自分の心を守るために。自分の足でちゃんと立っていられる様に。
…だけど結局、忘れてるはずなんかなくて、ちゃんと憶えていて、だから今こうして岩淵くんにあんな事言わせちゃってる。
「…だから、大丈夫です。あたしの事は気にしないでください」
かっこよく生きていきたかったのに、あたしはこんなにもかっこ悪くて、必死で抑え込んだ分傷ついて。
こんなあたしが、なにも関係ない岩淵くんを傷つけるなんて、しちゃいけない。
さっきよりも弱くなっていた岩淵くんの腕の力。ゆっくりほどいて、自動ドアを抜けた。


