「……あ。やばい忘れてた」
「ん?」
食べ始めてから10分ほど経った時、朱理はなにか重要な事でも思い出したのか一度硬直した。
かと思ったら、一気に残りの麺をかきこみ始める。
「…っごほ、ごほっ」
「ちょっ、大丈夫?」
むせる朱理を心配して声をかけると、彼女はコップの水を飲みながら手のひらをこちらに向けて『大丈夫』と合図する。
「…どうしたの、なんか用事?」
入っていた水を一気に飲み干した朱理に訊く。
「うん、今日ねーちゃんが帰ってくるの。お母さんと空港に迎えに行くんだった」
「え、お姉さんて、パリに行ってた?」
「そーそー。1年ぶりかな、帰国するの」
朱理には6歳上のお姉さんがいる。
確かファッションデザイナーかなにかの勉強やら仕事をするために日本を出て、遠く離れた花の都で生活していると聞いた。
「…って事で、あたし先帰るね!」
「うん、気をつけてね」
朱理はいそいそと、食べ終えたお皿を戻して小走りで学食をあとにした。


