忘れなくても、良いの……?
あたしはずっと、リンを忘れて前に進まなきゃいけないと思っていた。リンを忘れないと、前に進めないと思っていた。
だから、忘れなくても良いなんて、考えた事なかった。
「そんな大切な人の事、忘れてしまおうとするほうが辛いと思う。忘れたくないなら忘れなくて良い。…俺は、そう思うよ」
……ああ、そっか…それで、良いんだ。
そう思った瞬間、今までずっと詰まっていた呼吸が出来る様になった気がした。
酸素がうまく吸える様な気がして、あたしはゆっくりと深い呼吸をひとつした。
「……岩淵くん」
目の前の彼を見た。
今日、あなたに話せて良かった。あなたが言葉をくれて本当に良かった。
「ありがとう」
話を聞いてくれた人があなたで、本当に良かった。
「どういたしまして」
岩淵くんは屈託のない笑顔を見せると、立ち上がってあたしに手を差し伸べた。
「ヒマワリ、もう少し歩けば見れるよ、行こう」
「うん」
あたしはその手を取って立ち上がり、2人並んで木のトンネルを抜けた。


