「お世話になりました!」
お別れの時だ。
「忙しいのに、来てくれてありがとうね!」
おばあちゃんが言う。
「いえ、楽しかったです。ありがとうございました!」
翼がぺこりと頭を下げる。
杏と翔太が出てきた。
「杏~、これも持っていけって!」
父ちゃんが杏に畑でとれた野菜を持たせようとしている。
「もう十分もらったから…」
杏は困りながらも、結局持ち帰らされるようだ。
杏たちが乗り込んで、エンジンがかかる。
「洋ちゃーん!バイバーイ」
助手席のまどが開いて杏が手を振る。赤ちゃんの顔も見えた。
あたしも手を振る。
「杏~、赤ちゃん!また遊ぼうね!」
「うん、洋ちゃんも東京の家遊びに来てね!」
「絶対いくから~!!
翼ぁ~、野球がんばってね!大好き~!!」
生まれ初めてのアイノコクハク
翼もこっちに向かって手を振ってくれた。
「ありがと」
エンジン音が遠ざかる。
あたしは車が見えなくなるまで手を振り続けた。
…甘酸っぱいラムネの味が口いっぱいに広がった。

