東京、青山。







ツーツーツー…




「また勝手に切るんだから!」


呆れ顔で受話器を置く女、名前は水本…いや、今は平尾杏である。



28には見えないまだあどけなさが残る彼女だが、これでも一児の母である。




「翔太ぁ、先ご飯食べちゃおっか?」





リビングのカーペットに座って、食い入るようにテレビをみている息子に声をかける。





時計はもう9時をさしていて、3才の子どもが起きている時間ではない。





「パパ待つ~!!」




「パパは野球終わんなきゃ帰ってこないよ?」




「待つもん!」





「翔太、明日保育園…」






ウワアァァァァァァァァァ!!!!!!





テレビからの大歓声、




こちらリビングでも大歓声をあげて飛び上がって喜ぶ2人、




「翔太ぁぁぁぁぁー!!!!!


明日保育園休んでもいい!!



今日はお祝い♪♪」




「うきゃぁ!!!!!!」




ソファの上でばふばふとジャンプしながら、2人は幸せそうに声をあげて笑った。