「うん!あー、ホント!?
うん、うん!
ねえ、翔太ちゃんにかわって♪」
いつものようにキッチンで長電話する妻に、男はまたため息をつく。
「翔ちゃぁ~ん?
お姉ちゃんよ?大阪のお姉ちゃん♪
覚えてまちゅか~?」
ゴホンッ
男のワザとらしい咳ばらいにハッとしてリビングを振り返る女。
綺麗に巻かれた長い髪がくるりと揺れた。
「あ、もしもし杏?
ごめん!また電話する~!バイバーイ♪」
電話を切って、エヘヘと笑ってソファにだれている男の隣に座る。
「おかえり」
「ん、ただいま」
「凄いね!また今日も勝ってる♪」
「そやな、また勝つやろな~…
アイツ、阪神戦には手ェ抜けゆうといたのに!」
「ふふ…嬉しいくせに♪」
男はムッとして言った。
「リサ、飯!」
女は微笑んで言った。
「洗濯物は洗濯機!」

