素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「泰東」


その場で立ち止まっていれば橘部長が私を呼ぶ声が聞こえた。
急いで横を見れば橘部長が私を見下ろしながらこっちを見ている。


辺りを見渡せば私と橘部長以外は誰もいない。



「はい……なんですか?」

「お前は……覚悟はあるか?」



いきなりの言葉に私は目を丸める。
橘部長の言う覚悟って何……?
私は何を覚悟すればいいの?



「お前が作った企画書は決して会社の望む物じゃない」

「……はい」



それは十分に分かってる。
私と会社では目指すものが違う。
なのに……橘部長は何で私の企画書を採用してくれたのだろうか。



「でも俺は……お前の作った企画書の商品を世の中に出したい。
この商品は人を幸せに出来る力を持っていると俺は信じてる」



どうして……。
どうしてそんな事を言ってくれるんだろう……?
初めて私の企画書を見た時は『時間の無駄だ』って言ってたのに……。