素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「……」

「……」


翔也さんが出て行った教会は静まり返っていた。
私も橘部長も喋ることなく視線を逸らしていた。
でも……このままじゃダメだから。
これは……翔也さんが作ってくれたチャンスだから。

翔也さんは私と橘部長の背中を押そうとしてくれていたんだ。
やっと繋がった。翔也さんが悲しそうな顔をしていた理由も、あのメールの内容も。
だから私は……前に進まなきゃ。そう思い口を開こうとすれば、いきなり私の視界から光がなくなる。


「橘部長……」

「すまなかった……」

「え……?」


橘部長の声が耳元で聞こえる。
私……橘部長に抱きしめられているんだ。そう理解した時には体が熱くなっていた。
でも何で橘部長は謝るの?その答えは考える必要がなくなった。
橘部長が教えてくれたから。


「俺はお前に素直になれと言ってきたくせに……。
それが出来なかったのは俺だった」

「橘部長……」

「お前には俺なんかよりもっと若い奴の方が似合っているんじゃないか、水沢さんの方がお前を幸せにしてやれるんじゃないかって、考えれば考えるほど……自分の気持ちに素直になれなかった」

「……私もですよ。
ずっと……マコさんみたいな大人の女性の方が橘部長にはあってるって思って自分の感情を押し殺そうとしました」


私たちはお互いの事を想いすぎたんだ。
それが空回りしてしまった。


「……向日さんの事は心配しなくていい。
とっくにケリがついている」

「え……?」


ケリ?
意味が分からず固まっていれば橘部長は私を少し離しお互いの視線を交じり合わせた。
嘘という言葉が無縁なほど真っ直ぐな目をした橘部長。
少し怖いけど私はちゃんと聞かなければならない。
そう思い、私も真っ直ぐに橘部長を見つめ返した。