素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「……悪いがそれは許可できない」


誰の声なんて確認しなくても分かる。
こんなに低くて冷たい声を出せる人なんて……ここにはあなたしかいない。


「……橘部長……」


思わず出た声はあまりにも小さくて誰にも届かなかった。


「……許可できない?別にアンタの許可なんて必要ないし」


翔也さんが言えば、橘部長はゆっくりと私たちに向かって歩いてくる。
でもおかしい。
橘部長の目には翔也さんではなく私が映っている気がする。


「……泰東」

「……」


橘部長が私の名前を呼んでいる。
それは分かっているのに反応が出来ずにいた私。


「……中途半端な気持ちだったらどれだけ楽か……。
水沢さん、あなたは誰にも負けないと言ったが……。
俺だってそのつもりだ」

翔也さんに話しかけているはずなのに視線は私から逸れることはなかった。
そして……私が1番欲しかった言葉を橘部長はくれた。


「……泰東……お前が好きだ」


じわりと胸の奥が少しずつ熱くなる。
嬉しい気持ちが広がるが信じられない気持ちの方が強かった。
だが、翔也さんは違った。怪しく笑う翔也さんが視界の端に映った。


「……やっと……って感じだね」

「やっと……?」


翔也さんの言葉に疑問を覚え彼の方に視線を送れば呆れたような笑みが返された。
タメ息交じりに呼吸をつくと翔也さんは私と橘部長を交互に見る。
そしてもう1度深いタメ息をついた。


「俺はとっくに知ってたよ。
2人が両想いだって事くらい」

「え!?」

「な……!?」


翔也さんの言葉に驚きが隠せず声が漏れる。
それは私だけではなく、橘部長も同じだった。