素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「翔也さん私は……橘部長が好きです」


私の声が教会へと広がった。
揺らぎのない言葉が翔也さんへと届く。
彼は震える手で私を優しく離すと私の両肩に手を添えた。


「橘さんは君を泣かせてばっかりだ。
これから先だって……哀しい想いをたくさんするかもしれない。
なのに……どうして……」


翔也さんは哀しそうに私を見ていた。
その顔に私の胸は締め付けられる。
でも私には逃げ出す事は許されない。
ちゃんと自分の気持ちを伝えなければいけない。
だってそれが……真っ直ぐに私にぶつかってきてくれた翔也さんへの礼儀だと思うから。
そう思い私はゆっくりと唇を動かした。


「私は……不器用だけど……優しくて温かい橘部長が大好きです。
例え私の気持ちが届かなくても、どんなに傷ついても……。
私が彼を好きという気持ちは揺るぎません」


私が言いきれば翔也さんは哀しそうに笑った。
でもその瞳の奥には優しさがある。


「……よく出来ました」

「……え?」


翔也さんは私の言葉を聞いた瞬間、優しく目を細めた。



「君は俺に希望をくれた。
化粧品を好きになっていいんだって、心から楽しんでいいんだって」

優しい笑顔も、柔らかい口調も……。
全てが私に向かってくる。


「君には感謝している……俺にとって夏香ちゃんは大切な人だ。
だから……」


翔也さんは一瞬だけ目を瞑る。
そして覚悟を決めたみたいに目を開いたんだ。


「今、俺が出来る……最高の恩返しを君にするよ」


一瞬だけ彼の視線が私ではない別の方に向いた気がした。
でも、それはすぐに私へと戻され、翔也さんは私の頬を優しく触れた。
そして彼の優しい瞳が私を引き寄せる。甘いマスクに見惚れていれば彼の唇が私の唇へと重なりそうな位置へと迫ってきていた。


「翔也さ……」

「俺に任せてよ」



抵抗しようとすれば、悪戯っ子みたいな顔で翔也さんは笑う。
唇が重なるまであと1㎝、という時に叫び声が聞こえた。