「さぁ着いたよ」

「ここは……?」


目の前には小さな教会があった。
何故ここに来たのだろうか……?
そう思いながらも私は窓から教会をぼんやりと眺めていた。


「さてと……夏香ちゃん行こうか」

「え……?教会にですか?」

「教会は後だよ。その前に準備しなきゃね」

「準備……?」


首を傾げる私に対して翔也さんは不気味なほど口角を上げた。
しかも右だけ。その顔はまるでいたずらをする前の子供みたいだった。


「早く来て!あまりゆっくりしていると計画が狂っちゃうからさ」


ニィッと笑う翔也さんについていけずにいると無理やり車から降ろされる。
そして翔也さんは私を引きずる様にして歩き出した。
それにしても……。


「計画って何ですか?」

「内緒」


私の質問に答える気がないのか怪しい笑みを浮かべるだけでそれ以上は何も喋らなかった。
翔也さんに連れてこられたのは小さな結婚式場だった。
なぜ……?
頭に疑問が浮かぶ私をよそに翔也さんは受付のお姉さんと何やら話をしていた。
私はここで待つようにと言われたので、少し離れたところで喋っているから話の内容は分からない。
でも……。
何で結婚式場なんだろう?
誰かの結婚式があるとか?でもそれはないか。
だって私も翔也さんも私服だし……。


「夏香ちゃんおいで!」


考えていれば私を現実に引き戻す様に翔也さんの言葉が飛んでくる。
私は急いで彼に駆け寄ると翔也さんは私を目の前にいた女の人に『じゃあ、お願いします』とだけ言ってどこかにいってしまった。

“お願いします”?
言葉の意味が分からずに呆然と立っていれば女の人はにこやかな笑みを浮かべて私を誘導した。