素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「俺を避けるのはやめろ」

「……別に避けてなんかいません」


あからさまな態度をとって置いてこういうのはどうかと思ったが他になんて言っていいか分からなかった。
私の言葉を聞いた橘部長は不快に思ったのか突然、私の手を引っ張り体の向きを変えさせた。
そして私の顎を掴み無理やり顔を上げさせられる。
嫌でも目に入った橘部長の顔。
その顔は表現が出来ないくらい恐ろしい顔だった。
眉間に寄ったシワが彼の怒りを表していた。


「避けているだろう。
なぜ俺を避ける。理由があるならきちんと……」


その言葉に私は唖然とした。
橘部長は私が避けている理由が分からないの?
なんで……そんなのフラれて気まずいからに決まっているのに。
それ以外に理由なんてある訳ないのに。
それほど橘部長にとっては私の告白はどうでもいいものだったんだ。

そう思ったら私の中で何かが音を立てて崩れていった。


「理由なんてありません」

「泰東」

「本当にないですから……仕事はきちんとやります。
だからもう……私の事は放って置いてください!!」


私が怒鳴った次の瞬間。
それをはるかに上回る様な大声がオフィスに響いた。


「放って置けるわけないだろう!!」


それは間違いなく橘部長のものだ。
橘部長がここまで感情的になるなんて珍しくて私は固まってしまう。


「お前は……俺にとって大切な……」

「っ!!やめてください……」

「泰東?」

「大切な部下……。
そう言ってくれようとしたんですよね?」

「ちが……」


橘部長が何かを言いかけたが私は聞きたくなくて橘部長の手を振り払いオフィスから飛び出す。
橘部長が私の事を何とも思っていない事は知っている。
だけど、橘部長の口からそれは聞きたくなかった。
聞いてしまったら私は橘部長の事を諦めなければならないだろう。
だから……聞きたくない……言わないでください……橘部長。


頬をつたる涙がすごく熱く感じた。