素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「そう言う橘部長だって……残業しちゃいけない日だって残るくらい化粧品が好きじゃないですか」

『それは……早く……』

「橘部長……?」


橘部長は急に何も喋らなくなってしまった。
言葉が詰まった様に、そして諦めた様にタメ息をついた。


『いや、念の為に今日は早く休めよ』

「あ……はい、ありがとうございます……では失礼します……」

『あぁ』

「……」

『……」



電話を切らなければいけないのに中々、電話が切れなかった。
何故か橘部長も電話を切ることなくお互いの間に沈黙ができる。


『泰東、お前が切れ』

「……橘部長が切ってください」


何か切りたくないって気持ちでいっぱいになる。
橘部長が切る分には大丈夫なんだけど、私が自分から切るのはちょっと寂しい。
そう思っていれば橘部長は軽くタメ息をついた。


『……じゃあ同時に切るぞ』

「え?」

『……いいな、5秒後だぞ』

「ちょっ……」

『5……4……』


何故かカウントダウンが始まり焦る私を無視するように進んでいく。
そして……。


『1』


橘部長の声に私は反射的に通話終了のボタンを押す。


「……何だったんだ今のは……」


なぜ普通に切ってくれなかったんだろう。
頭に疑問を浮かべながら私はベッドに寝転がる。
私は切るのが嫌で、寂しくて……電話を切ることが出来なかったけど……。

……もしかして橘部長も……。
少しは寂しいと思ってくれたのだろうか?


「……って、ある訳ないかそんな事」


何を妄想しているんだろう私は。
自分の呑気な発想に嫌気がさして私は枕に顔を埋め込んだ。