「っぷ!!何その勘違い!!最高!!」

「笑いすぎですよ、翔也さん」


目の前でゲラゲラと笑う翔也さんは私への配慮というものがないのだろうか。
そんなに笑われるとショックだ。
好きな人に別の人と付き合っていると勘違いされるなんて……。

でも……かえって良かったのかもしれない。
そうすれば私の諦めもつく……って……。
最低だ私……翔也さんの事を利用しようとしていた。


「だって面白すぎだもん!
まぁ……俺としては嬉しい誤算ってやつだけど」

「え……?」

「あーその顔はまだ信じてくれてないね?
俺が夏香ちゃんの事が好きだって」


恥ずかしい事をさらりと言われ、私の顔は熱を帯びた。
その顔を見た翔也さんは楽しそうに私の頬っぺたを突っついていた。
翔也さんの長い指が優しく私の肌に触れる。
この人は何をしているんだ、と呆れつつも彼にはとても感謝している。

彼がいたから私は壊れないですんだのかもしれない。
辛い時に傍にいてくれた、優しい人。
本当に感謝してもしきれない。


「だって本当に信じられないんですもん」

「酷いな~」


翔也さんには初めて会った時から、からかわれていた気がする。
だからか……どうしても信じられないんだ。

意地悪だけど……凄く優しくて温かい翔也さん。
こんな素敵な人が私の事を好きになってくれたなんて。


「って言うかさ……仕事しなくていいの?
俺は全然いいんだけどさ~夏香ちゃんと一緒にいられれば」

「あっ……」


仕事だという事を忘れていた。
痛恨のミスだ。いや、あってはならないミスだ。
頭を抱えて落ち込んでいれば翔也さんが私の頭を軽く撫でる。


「元気だしなよ?
今が1番、辛い時期なんだよ!これを乗り越えたら幸せが待ってるからさ!」

「幸せ」


私にとっての幸せってなんだろう。
考える様に目を瞑れば浮かぶのはやっぱり橘部長の顔だった。