素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「ごめんね?こんなに遅くなっちゃって」

「大丈夫ですよ。まだ10時前ですし」


いつの間にか時計はもうすぐ10時を指そうとしていた。
私と翔也さんは帰ろうとしていた所をサクラさんに止められて半ば無理やり飲みに連れて行かれた。
酔ったサクラさんの恐ろしさは見なかった事にしよう。
そう、心で誓っていれば翔也さんの手が私の手を優しく包み込んだ。


「送ってくよ」

「そんな!!大丈夫ですから」


手を握られた事もあり、オーバーなくらい首を横に振ってしまう。
それを見た翔也さんはクスクスと笑っていた。


「そこまで否定しなくても!」

「うっ……」

「いちいち可愛いよね夏香ちゃんって」


まただ。
またこんな恥ずかしい事を普通に言って……。
恥ずかしくはないのだろうか?
それとも彼にとっては普通の事なのだろうか……。


「考え事?手を繋いでいる事も忘れちゃうくらいの」

「え!?ちょ……離してください!!」

「いやだよ。離して欲しければ俺に家まで送られて?」


何という交換条件を出すんだこの人は。
私がどっちを選ぶかなんて分かりきっているみたいに意地悪な顔で私を見ている。

少し悔しいけど、私は小さな声で呟いた。


「……送ってもらえますか……?」

「なーんだ残念!」


パッと手を離すとわざとらしく肩をすくめる翔也さん。
分かっていたくせに、そう小さく呟けば『さあね』と笑っていた。

何だかんだ言って優しい人だ。
少し変わっているけど……。