素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「翔也さんのお蔭でこの化粧品の魅力を知りました」


彼に出逢う事がなければ決して使わなかったであろう“ゴールデンオレンジ”。
その魅力を知った私は化粧品を選ぶ時や作る時……ついつい目が留まってしまう様になった。


「……翔也さんは知らない間に誰かの人生を変えているんです。
私もその1人です。……翔也さんが思っているほど人は単純じゃありませんよ?
どんなに有名な人や格好良い人がメイクをしてくれたとしても……。
腕がない人にやられたって……ちっとも嬉しくないです」


私の人生を変えてくれたように、たくさんの人たちが翔也さんに救われていると思う。
何人の人たちが彼のお蔭で笑顔になれたのだろうか、何人の人たちが幸せを感じられただろうか。
きっと私には想像もできないくらいの人たちが彼に感謝していると思う。


「……夏香ちゃん……」

「みんな翔也さんのメイクが本当に好きなんだと思います。
……中にはそうじゃない人もいるかもしれないけど、全員がそうだって決めつけないで下さい」


翔也さんが思っている以上に彼のメイクは凄いと思う。
人を笑顔に出来る才能があると思う。


「私は翔也さんがメイク界の王子だって呼ばれている事は知らなかったけど……。
あなたのメイクに心を奪われました。あなたが誰かとかそんなの関係なくあなたのメイクが大好きです」

「……っ……」


私の言葉が彼を救えたかは分からない。
だけど、ちゃんと届いたって事は分かる。

だって翔也さんの瞳からはキラキラと輝くように涙が溢れ出ている。
今度の涙は悔し涙じゃないってひと目で分かるものだった。

その涙は見ていても哀しくない。
翔也さんがちゃんと前を向こうって必死に足掻いている証拠だから。


「……ありがとう……」

「……どういたしまして!」


翔也さんは手の甲で涙を拭うと飛び切りの笑顔で私を見てくれた。
その顔が全てを物語っている様だった。
彼のこれからの人生を。
きっと翔也さんは今より……もっともっと凄い人になると思う。


「夏香ちゃん」

「はい?」

「……俺にもう少し……勇気をちょうだい」


翔也さんの言葉の意味が分からず首を傾げた。