素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

翌日


私は翔也さんとの約束を守るために指定された場所に向かっていた。
スマホに送られてきた地図を見ながら歩く事40分。
見覚えのある建物が私の目に入ってきた。ここは確か……。
記憶を辿ろうとした時大きな声が私に向けられた。


「夏香ちゃん~!!久しぶりね!!」


声の持ち主を見た瞬間に私は苦笑いを浮かべた。
記憶が一致した証拠だ。


「お久しぶりです。サクラさん」


目の前にいるのは可愛らしい服を着たお姉さん。
……生物学上はお兄さん何だろうけど、そこは敢えてツッコまない。


「翔也が中で待ってるわよ~」

「ありがとうございます」


サクラさんの背中を追う様になかに入れば大きな鏡たちが私を出迎えてくれる。

ここは前に1度だけ来た事がある。
私が橘部長のご両親に会う時に、翔也さんに連れてこられたメイクサロンだ。

少し懐かしい気持ちになりながら翔也さんが待っているという部屋に向かう。


「ここにいるわよ~」

「ありがとうございました」

「い~え~!翔也の事……お願いね?
何か悩んでいるみたいで……」

「悩んでる……?」


ある部屋の前でサクラさんは足を止め私の方を振り向く。
どこか悲しそうな顔をするサクラさんはそれ以上は何も教えてくれなかった。
サクラさんが去った後、私は扉をノックした。
返事がなかったのでどうしようか迷ったが、恐る恐るドアノブを回せばガチャッと小さな音と一緒に扉が開いた。

ゆっくりと中に入ればそこには数えきれないくらいのメイク道具があった。
床にはたくさんの紙が散らばっていた。
その少し奥にはメイク道具を真剣に見ながら何かを書く翔也さんの姿があった。


「あ……こんにちは夏香ちゃん!ごめんね、せっかくの休日なのに」


私に気が付いた翔也さんは、申し訳なさそうな声で謝ると持っていたメイク道具を置き私の方にやって来た。