素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

『あのさ……明日……少し時間ない?』

「え?」

『……駄目……かな……?』


翔也さんの声は凄く哀しそうに聞こえた。
何かあったのだろうか、疑問に思ったがそれを口に出す事はしなかった。

翔也さんには色々と助けて貰ったから私に力になれる事があったらなりたい。
そう思い笑顔を浮かべる。


「分かりました」

『本当に!?
詳しい事は後でまた連絡するね!』

「はい」

『じゃあ……』

「失礼します」


翔也さんとの電話を終えたちょっと後に橘部長が帰ってきた。


それから私たちは飲みなおした。
他愛の無い話をしながら2人で静かな時間を過ごした。

橘部長は、いつだって冷静で大人で格好良い。
そんな橘部長の違う1面を今日、見る事が出来た気がする。


「泰東……そろそろ帰るか?」

「……もうこんな時間ですもんもね」


気が付けば日付が変わりそうになっていた。
ちょっと思いがけない出来事はあったにしろ、橘部長と一緒にいると時間が経つのが早い。
楽しい時はあっという間に過ぎてしまうのだ。少し哀しみを胸に抱えながら私たちは準備をして個室から出る。

お店の廊下を歩いていれば1人の女性が私たちの方に向かって歩いてきた。
確かあの人……料理を運んできてくれた店員さんだ。


「あの……すみません」


そう思っていれば、店員さんは橘部長に話しかけていた。
顔は紅く染まり、手には小さな紙を持っている。
連絡先を渡そうとしているのか、すぐに状況を把握した私はこの場にいるが耐えきれなくなった。


「先に行ってますね」


私は後ろから聞こえる橘部長の制止の声を聞こえないふりをしながら歩き出した。