素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「俺にとってあの言葉がどれだけ勇気をくれたか分かるか?
あの言葉に救われた……そして絶対に夢を叶えると誓ったんだ」


強い眼差しに私は目を奪われた。
真剣な想いが橘部長にはあって、その想いは私と似ている。

もし……私たちの想いが重なれば……きっと……。


「泰東……ありがとう。
俺の前に現れてくれて……俺に夢を追いかける勇気をくれて」

「……橘部長……」

「俺は……」


橘部長は何かを言いかけるとハッとしたように私の上からどいた。
そして私の体を起こしてくれたと思ったら気まずそうに呟いた。

『すまなかった』と。
押し倒された事だろうか、でも……謝られたくはなかった。

何でだろ、胸が苦しい。
そう思いながらも、自分が座っていた場所に戻る。

何事もなかったかのように私たちは過ごした。
普通に話しながら飲んだり、ご飯を食べたり。


橘部長にとって私は、ただの部下。
分かっていたはずの事が今になって胸を痛めつける。


「……すまない、少し外す」

「はい」


橘部長が出て行った個室は凄く哀しくて、私はどうしようもない気分になった。
胸の痛みに耐えていれば、バイブの音が部屋に響き渡った。
揺れ動くのは私の携帯だった。

鳴り止まないから着信だろう。
思った通り着信だったそれを耳へと当てる。


「もしもし」

『もしもし夏香ちゃん?』

「翔也さん……?」


相手を見ずに出たから、少し驚いていれば楽しそうな声が電話越しに聞こえる。
そんな声を聞くと少し痛んでいた胸が和らいだ気がした。