素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「そうか……」


どうしてだろう。
彼の顔が儚げに見える……。
橘部長の顔はとても哀しそうで、そんな顔をして欲しくないって思うのに何もできない私は無力だ。

橘部長は私にたくさんのものをくれた。
チャンスだったり、素直になれる勇気だったり、恋だったり。
それは目には見えないけど、私にとっては大切なものだ。

それなのに……何もできない自分が悔しい。


「橘部長……無理……しないでください」

「……泰東……」


やっとの思いで出せた言葉は彼を助ける力に微塵もなれないような言葉だった。
でも、橘部長はそんな私の言葉を受け入れてくれるように顔を緩めた。


「橘部長?」

「……俺はお前には感謝している」

「え……?」


橘部長は何かを決意する様にビールを口にした。
そして、視界に私を捉えると柔らかい笑みをくれるんだ。


「俺は1度、夢を諦めかけたんだ」

「夢……?」


橘部長の夢っていったい何なんだろうか?
首を傾げながらも私は橘部長を見続けていた。
少しでも彼の事が知りたくて、その一心で彼の話を聞く。


「さっきも言っただろ?
“消費者が笑顔になれる、幸せになれる化粧品を作る”それが夢でいつか会社を自分の力で起ち上げたかった」

「……」


普通は夢の事を語る人は嬉しそうにキラキラした顔をするだろう。
でも、橘部長は苦しそうに夢を語っている。


「その夢は会社に入った途端に打ち砕かれたよ」

「……っ……」


橘部長は話す度に顔を歪める。
苦しそうに……哀しそうに。