素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「だからこそ……お前の才能をここで埋もれさせるのは嫌なんだ。
お前にはちゃんとした環境で、自分の想い描く理想の化粧品を作って欲しい。
……俺の様に無駄な時間を過ごして欲しくないんだ」


橘部長は苦しんできたからこそ、私が同じ苦しさを味あわない様に導いてくれようとしているんだ。

橘部長の優しさに胸がいっぱいになる。
橘部長の事が好きだからという理由は無しにしても、この人についていきたいと思った。

この人となら、私だけでは絶対に出来ない事が出来るのではないか、そう心が教えてくれる。


だけど私には分からないことが1つある。
橘部長についていくにしても、この疑問を解決しなければ話しにならない。

そう思い私は口を開く。


「……橘部長が最初に私の企画書を見た時の事を覚えていますか?」

「あぁ。もちろんだ」

「その時……橘部長は……」


あの時の光景が目に浮かび、思わず言葉に詰まる。
鋭い目つきで私を見ながら橘部長が放った一言が私の頭をグルグルと回る。
今までは考えないようにしていた。
この言葉の意味を聞くのが怖くて、ずっと逃げていたんだ。
だけど、今なら私はこの言葉の意味を受け止められる気がする。

決意したかのように、私は口を開いた。


「『無駄な努力だ』そうおっしゃいましたよね?
それなのに……何で私の企画を取りあげてくれたんですか?」

「……」


私の言葉を聞いた橘部長は目を大きく見開いて固まっていた。
何故驚く必要があるのだろう?
そう思っていれば深いタメ息が聞こえた。
そして呆れた様に橘部長は呟いた。


「馬鹿な奴だ……」

「はい!?」


いきなり馬鹿扱いをされて、驚いた私は橘部長を軽く睨んだ。
理由も分からずに馬鹿にされるなんて耐えられない。